フランス語に限らずフランスやフランス文化について、ちょっと面白い話や、あまり知られていない情報をアトランダムにご紹介します。
太陽は黄色い/ 『ハリー・ポッターと賢者の石』フランス語版/ 憲法に違反して/ フランスでは「マクド」/ 読み上げ読み下げ/ おつりは足し算で/ 母なる海/ シャネルよ、お前もか/ ハリー・ポッターふたたび/ レッド・アイ/ 洋の東西を問わず/ ググレ・ゴグレ/ "コンピュータ"から50年/ 女性喫煙者には/ “冬”とは? /スープは"食べる"もの /パングラム /勝手に日仏ちゃんぽん(1) /新語 /仏和辞典考 /リエゾンはフランス語だけのものではない /六角形 /iPhoneの読み方は?
太陽は黄色い フランスの太陽は黄色い。とは言っても、フランスの大気が何か特殊なわけではない。フランス人の幼児にクレヨンで太陽を描かせると、色についてあらかじめ指示を与えない限り、黄色で塗るのが普通らしい。日本では、国旗の日の丸の影響があるのかどうか定かではないが、太陽は赤いものというイメージが浸透しているので、これはちょっと驚く。言葉に関しても同様で、フランス語には「黄色い太陽」「黄金色の太陽」という言い方はあるが、「赤い太陽」とは普通言わない。中天の太陽は、そういえば実際、赤より黄色に近いわけで、フランスのほうが写実的なのだろうかなどと思ってしまう。日本の子供はいったいどこの時点で、太陽の色が「赤い」と刷り込まれるのだろう? |
『ハリー・ポッターと賢者の石』フランス語版 この大人気小説の仏訳が面白い。そもそもフランス人は言葉遊びが大好きなのだが、この作品においても、ウィットに富んだ表現がそこかしこに見られるのだ。オリジナルの英語版と比べてみると、文を省いたり書き足したり、かなり自由に翻訳している。語呂合わせの妙は例えば「組分け帽子」という章題にもうかがえる。原文では"The Sorting Hat"つまり単に「分類する帽子」の意味で味も素っ気もないが、仏訳では"Le Choixpeau Magique"(ショワポー・マジィク)と訳されている。実はフランス語には"choixpeau"という語は存在せず、これは"chapeau"(シャポー=帽子)という語に"choix"(ショワ=選ぶこと)というニュアンスを付け加えた造語なのだ。何とも洒落ているではないか。私が翻訳者だったとして、仏語版から訳すとしたら、「魔法の選ぼうし」とでも訳そうか(笑) |
憲法に違反して フランス語のすべての単語の中で最も文字数の長い単語は、「憲法に違反して」という意味を持つanticonstitutionnellement(アンティコンスティテュスィオネルマン)なのだそう。もう記憶が定かではないが、エドゥアール・デュジャルダンというフランス作家の『もう森へなんか行かない』という小説の中にも、この単語がフランス語の単語の中でもっとも長いものだ、という一節があったように思う。 |
フランスでは「マクド」 ファストフード店の「マクドナルド」を関東方面では「マック」と呼び、関西方面では「マクド」と呼ぶというのが定説らしいが、フランスでは「マクド」なのだ。だからと言って、フランス語が関西弁に近いというわけでもない。言葉の流れの柔らかな関西弁を話す人はフランス語の発音が得意だとか、「い」と「え」の中間母音に慣れている東北地方の人はフランス語の発音が得意だとか、様々な説が巷に流布しているが、真偽のほどは不明にしろ、歯切れのよい江戸弁はどうやらあまりフランス語向きではないようだ。 |
読み上げ読み下げ 英語の本の背表紙に注目したことがあるだろうか。英語圏で出版された本がすべてそうなのかどうかはわからないが、一般にはタイトルが上から下へと書かれている(読み下げ)。これに対し、フランスで出版される本のほとんどは、タイトルが下から上へ書かれているのだ(読み上げ)。本を立てておくぶんには、どちらでも読みにくいとは感じないが、本を横に寝かせておくとなると、そうはいかない。フランスの本を寝かせて、しかもタイトルが読みやすいようにするためには、裏表紙が上にくるように置かなくてはならない。表紙が上に来るように置いてしまうと、背表紙のタイトルが逆さまになり、極めて読みにくい。フランス人は気にならないのか不思議だ。 |
おつりは足し算で 買い物の際おつりの計算は、客が渡した金額から品物の金額を引くのが当たり前と私たちは思っているが、フランスではそうではない。一言で言えば日本は「引き算」、フランスは「足し算」という方式の違いがある。欧州通貨ユーロで話を進めるとこんがらかるので、日本円で例を挙げよう。3,500円の買い物に1万円札を出したとしよう。私たちはすぐ「10000-3500=6500」と考えるだろう。レジでは「大きいほうからお返しします」と、まず5千円札1枚と千円札1枚を渡してくれるかも知れない。これをフランス式でいくと、まず買い物の値段「3,500円」に端数を加えて繰り上げるようにしていく。つまり最初に500円玉をくれて「はい4,000円」(3500+500)と言う。それから千円札1枚をくれて「はい5,000円」、最後に5千円札をくれて「はい10,000円」(この1万円とは客が出した1万円に相当)となる。これは慣れていないとかなり混乱する。私も書いていて混乱するくらいだ(笑) |
母なる海 引用されることも多いのでご存知の方もおありだろうが、三好達治の詩集『測量船』所収の「郷愁」という詩に、日本語の「海」という文字の中には「母」という文字が含まれているが、フランス語の「母」という語の中には「海」がある、という意味の一節がある。学生時代に初めてこのことを知った時にはとても感激した。フランス語で「母」はmère、「海」はmerとつづり、確かにmèreの中にmerというスペルが含まれている。日本語ではあくまで文字の形のみの対比だが、フランス語の場合、どちらも同じ女性名詞で、しかも発音はまったく同じ「メール」だ。「母なる海」という表現がまさにぴったりくる。 |
シャネルよ、お前もか 2004年4月6日付の新聞によると、フランスのかの有名ブランド、シャネルが東京国際フォーラムのガラス棟に「シャネル・ルミエール」という副名称をつけることにしたそうだ。これにはさすがにあきれてしまった。「光」の意味のlumièreの読み方は「リュミエール」であり、断じて「ルミエール」ではない。カタカナ表記に限界があるのはもちろんだが、「ル」と「リュ」ではまったく音が異なる。同じようなことを「日本語の部屋」でも書いているが、いくら日本人には発音しにくいからと言って、明らかに間違いである読み方を採用するとは!自国語を大切にするフランスを代表するシャネルともあろう会社が! |
ハリー・ポッターふたたび フランス語を知っていると、「ハリー・ポッター」シリーズの読書の楽しみが倍加する。著者J.K.ローリングがフランス語の教師であったこと、フランス在住経験があることは知られているが、フランス語の要素が作品の随所にちりばめられているのだ。とりわけそれは固有名詞のつけ方に顕著で、例えば全巻通してハリーと深くかかわってくる魔法使い「ヴォルデモート」を取り上げてみよう。原作でのつづりは"Voldemort"で、この名前を見た途端、フランス語を知っている者は"vol de mort"(ヴォル ド モール)という言葉がイメージできる。訳せば「死の飛翔」、いかにも最も恐ろしい闇の魔法使いというキャラクターが表現されている命名だ。英語圏の人々でフランス語を知らない人は、この名前に接してどう感じるのだろう。 |
レッド・アイ 右目に結膜下出血、通称レッド・アイと呼ばれる症状を起こしたため、フランス語では何と言うのだろうと調べてみた。《les yeux rouges》(「赤い目」の複数形)かな?と思いきや、これは写真を写したときの所謂「赤目現象」をさす表現だった(笑) 眼科疾患としての言葉は《l'œil rouge》と単数形を使うことがわかった。フランス語では、同じ単語を使っても、単数と複数とでは随分意味が異なることも多い。そして「目」という単語は極めて特殊で、単数形と複数形がまったく違うスペルなのだ。ちなみに、「結膜下出血」という正式なフランス語は、《hémorragie sous-conjonctivale》と言うらしい。(2004.11.27) |
洋の東西を問わず フランスの前大統領フランソワ・ミッテランの名前のスペルを確かめたくて検索してみた。自信がなかったのは、「ミッテラン」の「r」が一つなのか二つなのかという点だったのだが、正しいスペルは、François Mitterrandで、「r」は二つである。ところが、「r」が一つになっているスペルミスの何と多いことか!フランスのページ限定でGoogle検索しただけで、21,800件もヒットしてしまった(笑)もちろん、正しいスペルで検索すると182,000件のヒット数であるから、圧倒的に多いのだが、スペルミスの割合はおよ1割にものぼる勘定になる。これは、Mitterrandと書いてもMittérandと書いても、発音が同じになるということが一番の理由だろう。 日本の場合はどうだろうと、「小泉純一郎首相」という正しいキーワードと、「小泉潤一郎首相」という漢字の間違ったキーワードで検索してみたところ、正しいものは160,000件、間違ったほうは160件、「順一郎」だと46件という結果だった。(2005.5.14) |
ググレ・ゴグレ 検索エンジンGoogleで調べることをネット用語で「ぐぐる」と呼ぶのはよく知られている。ふと、フランス語にもこの類の表現はすでに存在しているのではないかと思いついて調べてみると、案の定あった! 《Googler》という新語の動詞がネット上で通用しているではないか!フランス語の動詞の原形(正確には「不定詞」と呼ぶ)は、決まった数種の語尾の形になるのだが、最も多いのが《-er》という語尾をもつ動詞である。この語尾は新語を作るときも有効で、例えば英語のstopという動詞は、stopperというスペルの動詞としてフランス語に取り入れられた。 ただ、発音に関しては、フランス語では《oo》という綴りは通常「ウ」ではなく「オ」と読むので、「ゴグレ」と発音することは考えられる。けれども、フランスのあるフォーラムでのアンケートによれば、Googleを「ゴーグル」と発音する人は10%で、英語と同様「グーグル」と発音する人は89%とのことだ。そうすると、動詞Googlerも「ググレ」と読む人のほうが多いのかも知れない。さすがにネット上では発音まで確認できないのが残念だ。(2005.6.10) |
“コンピュータ”から50年 フランス語でコンピュータのことを《ordinateur》(オルディナトゥール)と言う。この言葉が出来てから今年で50年経つ。1955年にIBMフランスが最初のマシンを商品化する際に、フランス語ではどういう名前にすべきかについて、政府が10人の科学者に案を出させたのだ。《ordinateur》を提案したのは、ソルボンヌのラテン文献学教授、ジャック・ペレ。これが採用されて、IBMは《ordinateur IBM 650》という商品名でマシンを売り出し、以後この単語がコンピュータを指すフランス語の普通名詞となっていった。《ordinateur》は「秩序立てるもの」というような意味の造語である。もし他の人の案が採用されていたらと思うと、面白い。他案は以下の通り。 ondelette(オンドレット):「水面の波動」 variation(ヴァリアスィヨン):「変化」 complexité(コンプレクスィテ):「複雑さ」 élémentaire(エレマンテール):「基礎の」 cristal(クリスタル):クリスタルガラス」「水晶」 miroir(ミロワール):「鏡」 désenchevêtrement(デザンシュヴェトルマン):「もつれをほどくこと」 rayonnement(レイヨヌマン):「放射」「輝き」 hélice(エリス):「プロペラ」「螺旋」 icône(イコーヌ):「聖画像」、現代では「アイコン」の意味にも使う 舌をかみそうなdésenchevêtrementにならなくて良かった!(2005.8.2) |
女性喫煙者には 日本では今年7月よりタバコの箱に従来よりはっきりとした警告を表示することが義務付けられたが、フランスでは2003年3月の条例改正により、インパクトのある警告がすでに表示されている。 日本の8種類の警告文はどれも生真面目なものだが、フランスの警告は実に味があると思う。14種類あるうちのひとつが写真のもの。"Fumer provoque un vieillissement de la peau"「喫煙は、肌の老化の原因となります」というものだ。このタバコはメンソールで、メンソール味は女性に好まれることから、女性向けの警告文にしたのかも知れない。病気になるなどと言われるよりも、肌が衰えると言われたほうが、女性にとっては直接的なショックなのではないだろうか(笑) そういう女性心理まで視野に入れた表示だとしたら、これはまさにフランスのエスプリそのもののように思える。(2005.9.21) |
“冬”とは? 日本語で「冬」と言ったら、通常太陽暦で、12・1・2月のことと誰もが思う。けれども、天文学上の「冬」は、冬至から春分まで、つまり12月22日頃から3月21日頃までを指すのだそうだ。 さて、フランス語で"hiver"(冬)と言った場合は、明らかにこの天文学上の定義が一般にも浸透している。試しに子供向けの仏仏辞典(日本で言う国語辞典のようなもの)をひいてみても、"la plus froide des 4 saisons, du 22 décembre au 21 mars"(四季のうち最も寒い季節、12月22日から3月21日)と説明がなされている。 日本語の感覚では、同じ年内で秋の次に冬がくると普通思うわけだが、フランスでは12月中の冬は10日間ほどしかないので、だいたい冬と言えば1~3月という感覚になる。 これは、なにか出来事のあった年を調べているときに勘違いしやすい。例えば「2000年の冬に…」と書かれていた場合、日本語的感覚で読んでしまうと、2000年の12月かと思うが、そうではなく、2000年の1~3月なのだ。 (2005.10.6) |
スープは"食べる"もの 最近よく見かけるインスタント・スープのTV CMがある。野菜の具がたくさん入っているので、子役タレントが「飲み物と言うより食べ物ですね」と言うと、姉役(かな?)のタレントが、「こいつ、うまいこと言う」と感心する。そんなストーリーだ。 さて、フランスだったら、このCMは成立しないだろう。なぜなら、フランスではもともと、スープは飲み物ではなく食べ物だという認識だからだ。「スープを飲む」(boire de la soupe)という表現も皆無ではないが、普通は「スープを食べる」(manger de la soupe)と表現する。コンソメスープのような、具がほとんど入っていないものでも同様に「コンソメを食べる」(manger du consommé)となる。 (2006.2.14) |
パングラム 仏和辞典にはふつう載っていない単語だが、パングラム(pangramme)とは、アルファベットのすべての文字を使ったフレーズのことをいう。昔から、英語のパングラムとして、"The quick brown fox jumps over the lazy dog."というフレーズは知っていた。キーボードのアルファベット(古くは欧文タイプライター)がすべてちゃんと機能しているかを確認するのに役立つし、フォントの見た目を確認するのにも、こういう文を知っていると便利だ。最近ふと、フランス語でこれに相当するものがあるのだろうかと思い、出会ったフランス人に聞いてみたところ、思い当たらないと言う。どうやらフランスではあまり一般には知られていないようだが、調べてみるといろいろ見つかった。Wikipediaによると、"Portez ce vieux wisky au juge blond qui fume."というのが最も有名だそうだ。「この古いウィスキーを、タバコをすっている金髪の裁判官に持っていきなさい」といった意味だろうか。 もともとWとKという文字はフランス語にはなかった文字なので、これも含めようとすると、外来語を使わなければならず、何となくフランス語として美しい文章に見えない。もちろん、無理やりすべてのアルファベットを使おうとするのだから、すっきり意味の通った美しい文になるはずもないのだが。 ところで、フランス語で使用されるアクサンの類まですべて含めるとなると、とてもじゃないが覚えられる長さではない。例えば、このようなものだ。"Dès Noël où un zéphyr haï me vêt de glaçons würmiens, je dîne d'exquis rôtis de bœuf au kir a l'ay d'age mur & cætera !" (2007.11.17) |
勝手に日仏ちゃんぽん(1) ごくごく親しい仲間うちでしか通じないのだが、勝手に日本語とフランス語とを混在させたローカル表現を、ギャグ風に使うことが時々ある。日本語もフランス語もある程度よく知っている人にしか使えないので、こんなところに書くのもどうかと思うが、自分では気に入っているので、ご紹介しようと思う。 様々な人と話していると、何の話題であろうと、必ず自分の体験や経験に引きつけて、自分の話を始める人が少なからずいるものだ。話の元の論点などお構いなしに、ひたすらその人の過去の経験談や、それについてのご自分の感慨などを聞かされることになり、うんざりする。結局、そういう人は自分だけに興味があり、他人のことはどうでもよく、話題が政治であろうと経済であろうと、自分の周り5m四方くらいの狭い範囲でしか、ものを考えられないのだ。つまり「私って○○な人でしょ?」と相手に否応なしに同意を求めるタイプの喋り方をする人が、私は苦手である。一時期流行った言い方なら「ジコチュー」だ。 これを私たちは、「構ってモワ」な人、と称している。自分に常に注目していて欲しい、構って欲しい、という意味の「構って」と、フランス語の「私に」に当たる「モワ(moi)」を組み合わせたものである。フランス語の命令形は、最後の母音が「エ」の音で終わることが多い。「構って」の最後の「て」も「エ」の母音が含まれているから、音だけから言うと、ちょうどフランス語の命令形に似ているのだ。そして、「私を」「私に」というのを命令形にくっつけると、moiになるので、非常に語呂がよい。 こういう音の感覚は、フランス語をご存知ない人には、ピンと来ないと思うが、知っているものにとっては、とても笑える表現になる。 (2008.3.16) |
新語 少し前の「ググレ・ゴグレ」に書いたことにも関連するのだが、英語で「Yahoo!を使って検索する」という意味で"Yahooing"という言葉を使っている例を見た。それで、フランス語にもあるに違いないと思い、調べていると、あったあった。予想通り規則動詞の形で"yahooer"(ヤフエ)という言葉がネットで見つかった。もちろん、まだきわめてローカルな隠語・俗語のたぐいであるから、辞書などに載っているわけではない。私は使わないが、日本語で「ヤフる」という言い方があるそうだ。各国それぞれの文法に適った新語がどんどん作られていて、それはそれで面白い。 (2008.4.6) |
仏和辞典考 たまたま仏和辞典を見ていて、ある例文がひっかかった。電子辞書CASIO EX-wordに入っている小学館「ロベール仏和大辞典」である。動詞préférerの用例に、"Préférez-vous du café ou du thé?"という一文があった。この文自体は何の問題もない。気になったのは、その日本語訳のほうだ。「コーヒーと紅茶とどちらがお好きですか.」と訳してある。私の考えでは、これはちょっとおかしい。コーヒーと紅茶にはいずれも部分冠詞と呼ばれる「量をあらわす冠詞」がついている。これは、今飲み物を薦めていて、どちらがいいかを尋ねている意味になるはずだ。この日本語訳では、そういう意味には理解されない。もし単に、どちらが好きかという嗜好を尋ねるのなら、定冠詞がつき、"Préférez-vous le café ou le thé?"とならなければならないだろう。 「ロベール仏和大辞典」の、紙のバージョンでも調べてみたが同じだ。では、他の辞書ではどうかと、いくつかあたってみると、白水社の「ディコ仏和辞典」には、まったく同じ例文があるが、日本語は「コーヒーと紅茶のどちらにしますか」となっている。旺文社の「プチ・ロワイヤル仏和辞典」もディコとまったく同じ訳し方をしている。この2つの辞書の和訳のほうが正しいのだ。「ロベール仏和大辞典」はすぐれた辞典だけれども、これはまずい! 辞書を編纂するときには、もちろん何段階にもわたってチェックが入り、ネイティヴチェックも厳密にやっている。ただ、完璧なバイリンガルの人が読まないと、フランス語自体は正しいので、日本語訳が変なことに気づかないことも起こるのだろう。難しいものだ。 (2008.10.18) |
リエゾンはフランス語だけのものではない 最近のテレビCMを見て、あらためてそう思った。フランス語ってリエゾンとか約束事があってメンドクサイ!という声をしばしば耳にするが、リエゾンは決してフランス語特有のものではないのだ。Softbankの今冬のCMをよく聞いてほしい。→こちらの白戸家「ヒマラヤ」編 「すいません、おとうさん」という台詞をよく聞くと、「すいませのとーさん」と聞こえるはずだ。キャラクターを務めているダンテ・カーヴァーさんはアメリカの方だが、英語圏の人・フランス語圏の人は、「ん」の次に母音が来るという発音が苦手なのだ。「んお」と言うより、「の」という方が自然に発音できる。だからフランス語でも、mon amiを「モンアミ」と発音せず、リエゾンして「モナミ」となるのだ。 日本語でも、この例はいくらでもある。例えば「反応」という言葉は元々「はん」と「おう」だが、「はんおう」とは読まず、「はんのう」と読む。 ただ、単独では発音されない子音字が発音されるリエゾン(les amisを「レ アミ」と読まず「レザミ」と読むなど)は、やはりフランス語特有のもので、これは慣れるしかしかたないということになる。 (2008.12.30) |
六角形 「六角形」といえばフランス本土のことである。フランス語ではHéxagone(エグザゴヌ)といい、英語のhexagonと同じ言葉だ。近年テレビ番組で「ヘキサゴン」という名前のついたものがある。初期の番組では六角形に配置されたシートに回答者が座るというクイズ形式だったはずだが、今現在放送されている「クイズ!ヘキサゴンII」では、もうその形は残っていないから、英語でhexagonが六角形を意味することも、知っている人は多くはないだろう。 フランス本土の形状を見ると、六角形は一目瞭然。イタリアの国土がブーツの形であるのは有名だが、フランスの六角形ももっと知られるとよいなと思う。この呼称は、一般によく使われる。例えば天気予報。フランスには、マルティニクやレユニオンといった海外県もあるので、天気予報ではもちろんそれらの海外県のことも報じなければならない。本土全体の天気の傾向と海外県の天気とは当然かなり異なってくるので、「本土では」という大雑把な言い方をする際に便利なのがこのHéxagoneなのである。 (2010.12.12) |
iPhoneの読み方は? 今年からiPhoneを使っているので、iPhone関連のニュースや話題は気になる。フランスのサイトをうろうろしていたら、「iPhoneをどう発音している?」という話題のフォーラムに出会った。 選択肢として、「アイフォン」「アイフォヌ」「イフォン」「イフォヌ」が挙がっている。つまりはどれが正しいという決まりがないようなのだ。多い意見は「アイフォヌ」だった。フランス語で「電話」は、télépnone(テレフォヌ)だから、語尾を「フォヌ」という音にするのが馴染みやすいのだろう。"i"の部分はフランス語では本来「アイ」とは読まず「イ」と読むのが決まりなのだが、元の英語読みからかけ離れてしまうということで、英語の「アイ」という音を採用したものと思われる。 iPhoneと並んで、iMacやiTunesやiPodも、どう発音する?と意見を求めている記述を見かけたから、人によってまちまちなのだということがわかる。iPodは「アイポッド」と言うが、iMac、iTunesについては「イマック」「イチューン」だ、という人もいた。 (2011.6.3) 【追記】 iPhone 5が発売された9月21日付けの、フランスのニュース動画を見ていたら、アナウンサーは「アイフォヌ」と発音していた。 (2012.9.23) |
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