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il y a 時間の表現 (2)
日時: 2007/11/15 00:34
名前: 暮津試   <unfoutu@ybb.ne.jp>

(1)の仏文は、ドストエフスキーの『罪と罰』の仏訳です。(folio/Gallimard p.70) 主人公ラスコーリニコフが、いかにして、後段で殺害することになる金貸しの老婆のことを知ったかを叙述している部分ですが、僕がどうもすっと理解できないのは、引用部分の最後、il avait six semaines environ de cela という箇所です。これをそのまま訳せば、それから6週間が経っていた、というくらいの意味かと思います。これを前後の文脈に応じて考えれば、この「de cela=それから」の「それ」にあたる内容は、つまり見知りの学生Pに金貸しの老婆の住所を聞いたその事と読めますけれど、そうだとすると、さる冬の日に学生Pに老婆の住所を聞いてから6週間後に、主人公ラスコーリニコフはその住所(を聞いたこと)を思い出した、ということでなければなりません。ところが、この読み方では物語の時間的な進行に明らかに抵触するのです。つまり、冬の某日から6週間後ではこの物語の時間軸に沿わないというわけです。(文字数制限のため、(3)につづきます)

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