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あるエピグラフから
日時: 2009/11/18 22:16
名前: クルツ

 
てふママさん、こんばんは。

イギリスの詩人T.S.エリオットの『自由詩をめぐって』(Reflection on vers libre) というエッセイの
エピグラフとして、下のような文章が掲げられています。

 Ceux qui possedent leur vers libre y tiennent :
 on n'abandonne que le vers libre. (DUHAMEL ET VILDRAC)

この部分のみの引用で、どういう文脈なのかはっきりせず、簡単なようでいてすっきりしません。
邦訳(『エリオット選集』彌生書房刊)にあたってみましたが、どういうわけかこのエピグラフを
割愛していました。そこでいろいろ考えてみましたけれど、こういうことでしょうか。

「そういう自由詩を掌中にしている者らはそれから離れられない。
 それでかえって自由詩ばかりが見放されるのである」

あまり自信がありません。ちなみに、エリオットの本論の方は、伝統的な詩と自由詩というような区別は
事実上存在せず、区別できるのは、よい詩と、悪い詩と、完全なでたらめとだろうというふうに結論しています。

上の2行、てふママさんならどのように読まれますか。
よろしくお願いいたします。



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Re: あるエピグラフから ( No.1 )
日時: 2009/11/19 22:12
名前: てふママ

クルツさん、こんばんは。

これは困りました。まる一日考えましたが、正直、よくわかりません。1行目については、クルツさんの解釈で問題はないと思います。

厄介なのは2行目ですね。デュアメルとヴィルドラックがどういう状況で、これらの発話をしたかの背景について知識がないものですから、クルツさんの解釈で、論理性に問題がないかどうか判断がつかないのです。

この文だけで単純にどう読めるかといえば、
「自由詩を自分のものとしている人たちは、それに固執している。
だから自由詩ばかりそっぽをむかれるのだ」
というニュアンスかなと思いますが、一方、後半を
「自由詩ばかりそっぽをむかれているものだから」
と取れないこともないかなと思いました。
「:」をconséquenceととるか、causeととるか迷います。
結論が出ずに申し訳ないのですが、今のところまだ混乱中です(笑)
Re: あるエピグラフから ( No.2 )
日時: 2009/11/20 00:49
名前: クルツ

ご回答拝読。

おっしゃるとおり、後半の一文と「:」の扱いが問題ですね。
てふママさんの二つ目の解釈をお聴きしてなるほどど思いましたけれど、
やっぱり前後の文脈がはっきりしないと確定できないということですね。

気になって引用の出典を調べてみましたけれど、古本でも入手するのが難しいようです。
邦訳したひとも、このエピグラフを削除したところをみると、解釈に困ったのかも知れません。

それはともかく、ぼくは「:」を結果とばかり読んでいましたが、causeとしての解釈を教えていただいて、
またたいへん啓蒙されました。いつもありがとうございます。

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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