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en plus fort について
日時: 2010/08/20 20:56
名前: クルツ

てふママさん、こんばんは。
さっそくですけれど、教えてください。

J'etais en proie a une impatience que je n'avais pas encore connue, comparable, seulement, en plus fort, a celle qui me serrait la poitrine, le vendredi, a la gare de Fumay, lorsque je me demandais si nous parviendrions a partir.

またシムノンからの一節です。戦時中、疎開のために乗った列車でひとりの女性と出会った主人公が、いっときその女性が席をはずした折、ある予感から、もう彼女は戻って来ないんじゃないかと不安に胸を焦がすところです。その心持ちは、唯一、つい3日前に列車のなかで出発を待ち焦がれていたときの思いと比較できるというわけです。
ここで判然としないのが、文中の en plus fort という表現なんです。これが en plus forte なら une impatience にかかっているものとしてあまり問題を感じないはずなんですが、これは en plus に副詞の fort が付いているかたちだと思うんです。そうするとこれは端的にいうと、文中のどの部分にかかって、なにを意味しているんでしょうか。つまり、唯一列車の出発を待ち焦がれていた折の心持ちと比較できるけれど、もっとつよい une impatience におそわれていたということで大過ありませんか。しかし、その場合、この en plus fort は etais en proie a にかかっているという理解でよろしいでしょうか。

いつもお世話になりますが、よろしくお願いいたします。
ちなみに、ただいま出先におりまして、ケイタイをぽちぽち押しながらの質問です。乱文ご容赦ください。

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Re: en plus fort について ( No.1 )
日時: 2010/08/21 11:06
名前: てふママ

クルツさん、こんにちは。

en plus fortは成句的表現だなと感じてかなり探してみましたが、確証となる辞書や参考書の記述は見つからなかったので、私の読みの範囲で意見を述べることにします。
fortが副詞であるということは間違いないと思います。けれども、impatienceに関わる表現だとはどうしても思えないのです。comparableの補足のように読めるのです。意味に確信はないのですが、これは最上級に準ずる表現ではないかと感じました。まあ、原則から言えば最上級は定冠詞が必要ですが、前置詞がenなので、定冠詞とは馴染まず、誤解の恐れがない限り定冠詞なしで最上級を表す…ということですね。
それを踏まえて、ベタに訳せば「最も強く」ということになり、これを意訳すると「強いて言えば」くらいの意味かなあと思いますが、自信はまったくありません。

上記の解釈に至ったのは、実は酷似した文がレイモン・ラディゲの『肉体の悪魔』の一節にあり、そちらも「強いて言えば」の意味にとると通るなと思ったからで、その文をご紹介しておきます。
j'éprouvais une douleur délicieuse, comparable, en plus fort, à l'émoi que me donnent les montagnes russes.

「強いて言えば」という解釈が間違っていたとしても、comparableとその補語の間にen plus fortが位置していることから、comparableに関わる意味を持つだろうということには、ほぼ自信を持っています。
Re: en plus fort について ( No.2 )
日時: 2010/08/21 16:03
名前: クルツ

貴重なご教示ありがとうございます。
ぼくも、位置から判断すると comparable にかかるものとめぼしを付けていたんですけれど、辞書や文法書をみると、en plus + 形容詞の項しか該当しそうな記述がありません。そうすると、これを形容詞のかわりに副詞を置いた変形くらいに考えるほかなく、意味からいえば comparable にかかりようがありませんので、いっそう考えが紛糾した次第です。
だけど、てふママさんのおっしゃるように「強いて言えば」と取れば、すっと理解できますね。引いてくださったラディゲの一節と併置すると、もうそれ以外に考えられない気がします。
en plus fort は「強いて言えば」。これは手近な辞書にも文法書にも記載がありませんので、よくよく銘記しなければなりません。
いつもありがとうございます。またよろしくお願いします。
Re: en plus fort について ( No.3 )
日時: 2010/08/21 23:18
名前: てふママ

クルツさん、あれからまた少し調べてみました。
するとen plus fortは、comparableに限らず、比較のニュアンスを持つ語とともによく使われていることがわかりました。おそらく同じ使い方と思われる文を引用いたします。

【医学関係の文献】
... C'est cela l'infarctus du myocarde. Nous ressentons alors une douleur, qui ressemble en plus fort à celle de l'angine de poitrine: ...
心筋梗塞の痛みを、狭心症の痛みと比較しています。

【登山関係らしいフォーラムで、アドバイスしている文】
Le seul pb est un coup de Bora, comparable en plus fort à la tramontane, surveiller la météo et discuter avec les voisins... Très très impressionnant.
ボラ(アドリア海北岸の北東風)と、トラモンタヌ(地中海の北西風)を比較しています。

こうして見てみますと、「強いて言えば」という解釈は違うような気もしてきました。最初のお返事を考えていたとき、これは甚だしい類似性を示す表現かなと一瞬考えたのですが、シムノンの文章に、que je n'avais pas encore connueという部分があったために、そんなに類似している感覚を思い出せるくらいなら、que je n'avais... とは言わないだろうと思い直したため、「強いて言えば」のほうが論理に叶っていそうだと考えました。ですが、今回挙げました二文をも考慮に入れながら読むと、どうも「極めて(よく似ている)」という意味にとったほうがよいかなと思えてきたのです。いかがでしょうか?
Re: en plus fort について ( No.4 )
日時: 2010/08/22 21:50
名前: クルツ

さらに考究をすすめていただきありがとうございます。
シムノンの文脈でいえば、「強いて言えば」のほうがぴったりくるようにも思われるんですけれど、ただ、こんかい教えてもらった「極めて」という意味でもう一度シムノンにあたりますと、文中の seulement のニュアンスが少し変化して、文意が通るようにも感じられます。とはいえ、てふママさんも指摘されているように、「極めて」ですと、que je n'avais pas encore connue との関係の問題が払拭できないという気がします。ちょっと判断に困りますね。

こういうのはどうでしょうか。(そんなふうに読めるものかぜんぜん自信ありませんが)「(最も強いその)強さ(強度)において」〜と較べられる、似ている、というのはだめでしょうか。(それならきっと別のいい方ができそうですからだめでしょうね)

ひきつづき考えてみます。進展がありましたら、ご報告いたします。

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