笑えるフランス語

街やWebで見かけた困ったフランス語をご紹介
笑えることが少なくなることを願って…

アパレル業界、しっかりせんかい! 2012年08月21日(火)

  【LANVIN en bleu ランバン オン ブルー】
【La TOTALITÉ ラ トータリテ】
【LE CIEL BLEU ル シェルブルー】
【RIVE DROITE リヴドロワ】

数日前に、ある百貨店から来たニューブランドやリニューアルブランドのお知らせチラシ。一読しただけで、なんとツッコみたいブランド名がこれだけ出てきた。

«LANVIN en bleu»は、enを「オン」と読ませている。これは以前にも確か書いたことだと思うが、フランス語のenというつづり字の発音は、日本人が聞くと「オン」にかなり近く聞こえる。それでも、これはあくまで「アン」とすべきだと私は思う。日本人が普通に「アン」と発音するつもりで、舌を奥のほうに引っ込めて発音すると、この音になる。口はある程度開きがある。「オン」とカタカナを振るつづり字はon, omであり、口はほとんどすぼめているので、相当こもった音だ。聞こえる音重視という考え方もわからないではないが、元々暗い「ア」を鼻に抜いた音なので、やはり表記は「アン」のほうがよいと考える。カタカナ書きを最初に見た私は、英語のonを使っているのかと思ってしまった。

«La TOTALITÉ»は、「ラ トータリテ」ではアクセントの位置が違う。フランス語の単語は最終母音にアクセントがあるので、totalitéならば最後の「テ」の音にアクセントがあり、そこがやや長めに発音される。だから「トー」と伸ばすのは変なのだ。「ラ トタリテ」とすべきだ。カタカナ語で「トータル」という言葉が日本人にはなじみ深いので、そこからこの読み方が捏造されたのだろう。

«LE CIEL BLEU»は、お馴染みの間違い。cielの読み方は「スィエル/シエル」であって、小さい「ェ」を使った「シェル」とはならない。

«RIVE DROITE»は、明らかな発音間違い。droiteの読み方は「ドロワット」であって、「ドロワ」ではない。「ドロワ」という読みになるのはdroitというスペルの時だ。

アパレル業界では、本当にフランス語のブランド名がゴロゴロしており、それだけ間違いも多い。自分の着ている服などに間違ったフランス語がついていたら、気持ちが悪くて嫌だが、たいていタグにはフリガナまでついていないので、気づかないことも多い。
 

deをつけりゃいいってものではない 2012年08月15日(水)

  【Curry de beef カリー・ド・ビーフ】
【Curry de pork カリー・ド・ポーク】
【Hash de beef ハッシュ・ド・ビーフ】

こちらも投稿によるネタ。成城学園近くにあるカレー屋さんのメニューだそうである。「○○ de XX」というのは確かにフランス語の表現で(スペイン語にもあるが、発音は「デ」なので、「ド」ならフランス語的にしたと考えてよいだろう)「XXの○○」という意味である。

だが、この料理名は、最初の2つは英仏ごちゃ混ぜ。正しいフランス語なら「ビーフカレー」は、Curry de bœuf(キュリ ド ブフ)、「ポークカレー」は、Curry de porc(キュリ ド ポール)となる。

3つ目は更に恥ずかしい。「ハヤシライス」の「ハヤシ」のことだが、英語ですらないのだ。英語ではHashed beef(ハッシュド ビーフ)である。deを独立させてしまうのは、いくらなんでもひどい。フランス語には、似た言葉にhaché de bœuf(アシェ ド ブフ)というのがあるが、これは牛挽肉のことである。

フランス語でない単語をdeでつないでしまうこの手の例はいくらでもあるが、あまりカッコイイものではない。
 

日本がターゲット! 2012年08月14日(火)

  【Saint-Valentin セント・ヴァレンタイン村】

お知らせいただいたネタである。有名な日本のフランス旅行ガイドブックにこの村の紹介があるそうだ。フランスの村であるから、当然「セント・ヴァレンタイン」という英語読み(しかも英語のスペルはSaint Valentineだから、1文字違う)は正しくはなく、「サン・ヴァランタン」と発音すべきだ。

ところが調べてみて驚いた。日本郵便のサイトに「セント・ヴァレンタイン村に“愛”を誓おう!キャンペーン」というページがあるのだ。これはもう「サン・ヴァランタン」と発音しては、日本人には何のことだかわからないために、よく知られている「セント・ヴァレンタイン」という英語読みにすることを、日仏で取り決めてあるに違いない。

さらにびっくりするのは、この村の公式サイトである。「日本事務局へのお問い合わせサイト」「日本人担当者が綴る、村の案内ブログ掲載中」という日本語のバナーがあるのだ。この村は観光収入のほとんどを日本人のカップルに依存しているものと思われる。観光客を呼ぶためなら、正しいフランス語読みを英語読みにされても構わないという姿勢のようだ。事実、このブログでも日本人スタッフが「ヴァレンタイン村」という読み方で村を紹介している。こうなれば、我々ごときが目くじら立てても仕方ないのかも知れないが、フランス語を大事にしないなんて、フランスらしくないなあ。せめてどこかに「正式にはサン・ヴァランタンと発音します」くらいのことは書いておいて欲しいというのが、投稿者さんと私との共通の意見だ。

http://www.post.japanpost.jp/whats_new/2012/0116_01.html(日本郵便)

http://www.village-saint-valentin.com/saint-valentin(村の公式サイト)
 


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