仏和辞典にはふつう載っていない単語だが、パングラム(pangramme)とは、アルファベットのすべての文字を使ったフレーズのことをいう。昔から、英語のパングラムとして、"The quick brown fox jumps over the lazy dog."というフレーズは知っていた。キーボードのアルファベット(古くは欧文タイプライター)がすべてちゃんと機能しているかを確認するのに役立つし、フォントの見た目を確認するのにも、こういう文を知っていると便利だ。最近ふと、フランス語でこれに相当するものがあるのだろうかと思い、出会ったフランス人に聞いてみたところ、思い当たらないと言う。どうやらフランスではあまり一般には知られていないようだが、調べてみるといろいろ見つかった。Wikipediaによると、"Portez ce vieux wisky au juge blond qui fume."というのが最も有名だそうだ。「この古いウィスキーを、タバコをすっている金髪の裁判官に持っていきなさい」といった意味だろうか。 もともとWとKという文字はフランス語にはなかった文字なので、これも含めようとすると、外来語を使わなければならず、何となくフランス語として美しい文章に見えない。もちろん、無理やりすべてのアルファベットを使おうとするのだから、すっきり意味の通った美しい文になるはずもないのだが。 ところで、フランス語で使用されるアクサンの類まですべて含めるとなると、とてもじゃないが覚えられる長さではない。例えば、このようなものだ。"Dès Noël où un zéphyr haï me vêt de glaçons würmiens, je dîne d'exquis rôtis de bœuf au kir a l'ay d'age mur & cætera !"