Re: 直説法の過去時制について・・・ ( No.10 ) |
- 日時: 2008/05/24 23:54
- 名前: てふママ
- (その1)
まず、ひとつ訂正させていただきます。 >過去の状況を思い出しながら、話に生彩を与えるために使う半過去は、文章語に限られており、 >「描写の半過去」と呼ばれる用法に属するものでしょうから、まず会話では使わないはずです。 は、あとで読み返してみて、自分でも変なことを言っているなと思いました。「過去の状況を思い出しながら」はつけたのは間違いです。それ以前に、「描写の半過去」について、言及すべきではありませんでした。自分で脱線させてしまったのだと反省しております。ごめんなさい。 Un petit platさんが、私が描写の半過去について書いたことを、「これで十分なのです!」とおっしゃったので、マズイ!と思いました。そこは納得していただく点ではない、というのが最初からの私の立場でしたから、余計なことを(しかも間違いも含まれていて)書いてしまったものだと思い、今一度ちゃんとお返事しようと考えておりました。そして、差し出さんのアドバイスを拝見して、やっぱり差し出さんにも同じところに引っかかっていらっしゃるように思い、やっぱり私の書き方が悪いのだと再認識しました。
次に、差し出さんが書いてくださったことについて。 > ぼくは、フランス人からよく Tu disais que 〜 ,mais pourquoi?などと質問されます。 > 日本語でいう「〜と言っていましたが、どうしてですか」くらいのものでしょう。 > もちろん、ここに「昨日や先週の月曜日」の言葉も付きます。 > わたしは命名好きですので、これを「蒸し返しの半過去」と呼んでいますが、そんなことはどうでもよくて、これは「描写の半過去」です。
Tu disais que...のdireを「描写の半過去」と解釈するかどうかについては、少なくとも文法家が伝統的に「描写の半過去」と定義しているものとは異なると私は考えております。私は文法学が専門ではありませんので、現在主流をなしている半過去の用法分類と、自分の知識にある分類とは異なっている可能性がありますから、差し出さんのおっしゃっる「描写の半過去」と私がこれまでの文で使った「描写の半過去」の定義認識にはずれがありそうです。むしろ「絵画的過去」と言ったほうがよかったかも知れません。
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Re: 直説法の過去時制について・・・ ( No.11 ) |
- 日時: 2008/05/24 23:56
- 名前: てふママ
- (その2)
絵画的過去は、そもそも書かれた文章を前提とした分類ですから、会話文でそのことに言及するのは別次元の話になってしまうと考えました。もちろん、先に文法ありきではないので、文法上の分類を考慮に入れなければ、disaisについて「これは描写しているのだ」というご判断に異論はありませんし、ここではそれが本論ではありませんので、どうでもいいといえばどうでもいいのです。挙げてくださった例のdisaisのような半過去は、私の中では単なる「継続・進行」の1ヴァリエーションに過ぎず、結果として文に生彩を与えることがあるにしろ、これを描写とは捉えていないために、「描写の半過去」は会話では使わないという言い方になりました。 で、今となっては、書いてしまったものは仕方ないのですが、なぜ描写の半過去などを持ち出したかと言いますと、Un petit platさんが半過去にこだわっていらしたようなので、通常完了体(複合過去にしろ大過去にしろ)を用いないとあらわせない事柄を、半過去を使ってあらわす可能性があるかなと考えた結果、描写の半過去ならありうるか…と思いついたに過ぎませんでした。でも、これはかなり見当違いな説明でした。
No.5のレスで、私が「論点ではないですけれども、半過去の用法の話に移りますと」と書いたために、半過去の一般論を述べているとお考えになったのだろうと思いますが、私はあくまで、最初にUn petit platさんがおっしゃったmal chosir son momentを使うことを前提としていたつもりでした。前提をきちんと述べないのが私の悪い癖のようで、これも反省しております。
私の申しあげたかったのは、mal choisir son momentを半過去にできないということではないんです。そのことを何とかわかっていただこうと色々書きすぎて、余計混乱させてしまいました。一過性の過去の出来事を半過去であらわすことができないと、私が主張しているように聞こえたのかも知れませんが、そうではないのです。mal choisir son momentを半過去で言うことは、いくらでもあるでしょう。ただし、その場合は、最初におっしゃった「(いや〜)、昨日はツイてなくてですね・・・」の意味にはならないだろうと、私は考えているのです。
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Re: 直説法の過去時制について・・・ ( No.12 ) |
- 日時: 2008/05/24 23:59
- 名前: てふママ
- (その3)
ここが私の論拠なので、くどいのですが、我慢して読んでいただければ嬉しく存じます。 mal choisir son moment…大直訳で「機会をまずく選ぶ」、ちょっと別訳で「タイミングが悪い」「間が悪い」、どれでもよいのですが、例えばこれが現在形だった場合、まだ「ツイていない」に至っていないという判断です。mal choisir son momentという行為が完了して初めて「ツイていない」状態になる、言い換えれば、「機会をまずく選んだ」「間が悪いことをした」(日本語が変ですが)結果、「ツイていない」状態が生まれるのだと解釈しています。これが、完了相が必要と私が主張している論拠なのです。ですから、「私はタイミングが悪かったのだ」という日本語なら、文脈により、複合過去も半過去も大過去も可能でしょう。ただ、これはもしかすると、日本語の解釈の範疇に入ることかも知れませんので、いや「タイミングが悪い」ということが「ツイていない」という意味と同じだと判断されるのなら、私の前提はすべて崩れることになり、この件に関して私が述べたことは全部無意味ですから、忘れていただきたいと思います。
大過去については、「 "これには" 後悔の念などというメンタルな要素が感じられない」と申しあげました。一般論として大過去に後悔などのニュアンスはない、という意味で申しあげたのではないのです。mal choisir son momentの表現を大過去にした場合に、私の感覚ではそのニュアンスは感じられないと申しあげたつもりなのです、もちろんネイティヴではない身で、断言できるものでもありませんが。差し出さんのおっしゃっている「文脈や状況によりニュアンスが醸し出される」がまさにその理由です。
大過去に関しましては、せっかくケーキの話を書いてくださったことに対し、何も申しあげなかったのは、単に時間がなくなってしまったからで、申し訳ないと思っております。そして差し出さんの大過去に関するご見解についても書きたいのですが、またもや時間がなくなってしまいました。次回にさせてください。 これだけ書いても、思うことが言えた気がまだしておらず、ご理解いただけないかもと心配ですが、今日のところはとりあえず、ここまででご寛恕ください。
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Re: 直説法の過去時制について・・・ ( No.13 ) |
- 日時: 2008/05/25 22:51
- 名前: てふママ
- (その4)
では、大過去のケーキの話に移りたいと思います。
> 例えば、「一番おいしいと思ったケーキを選んだ」、「でもおいしくなかった、、」という >「事実」(字面ではありません)を仏文にする場合、最初の「choisir」を複合過去でも大過去 > でも構わないのではないでしょうか?
これは、その通りだと思います。
> では、なぜ『大過去』にするかと言えば、「選んでしまった」という「後悔の念」がそうさせるのではないかと・・・?
これは、その可能性は大いにあると思いますが、そうに違いないと確信するほどの決め手は私には見いだせないのです。 と言いますのは、例えば、大過去を使って前提を示す(伏線を張る)ことによって、そのあとには何かどんでん返しのような話が続くのだと、無意識に相手に用意を促す効果があるとも取れます。それじゃあ、複合過去だと、事実を述べるだけのいわば無味乾燥な時制だから、何の効果もないかと言えば、それもやっぱり場合によると思うのです。淡々と事実を述べて相手に油断(オーバーですが)させておいて、次に意外な展開を見せれば、大過去を使ったときとは違う劇的効果がある場合もあります。時制の選択は、内容はもちろんのこと、語順の違いや、その時の話者の口調もありましょうし、どういう場でそれが話されているかにもよりましょうし、聞き手と話し手との関係性によっても違ってくる可能性がありますし、話し手の口癖もありましょうし、時制の、純粋に時間的な位置関係をあらわす以外の効果については、きわめて重層的に様々な要素が関係してくるので、私は差し出さんのように「大過去には「後悔又は叱責」というニュアンスを持っています」と断言してしまう勇気はないのです(笑)
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Re: 直説法の過去時制について・・・ ( No.14 ) |
- 日時: 2008/05/25 22:54
- 名前: てふママ
- (その5 最終)
>「私が駅に着いた時、電車は出発してしまった」--- いかにも教材的な例文ですが、 > そもそもこの事実を伝えることの真意はなんなんでしょうか? 単に事実を伝えたいだけでしょうか? > それなら「出発してしまった」と訳さなくてもいいのでは?(と、大過去のページをめくる度にそう思います・・)
おそらくこれはUn petit platさんのタイプミスかと思いますが、大過去を使う例として出されたのですよね?それなら「出発してしまった」ではなく「出発してしまっていた」ないしは「(もう)出発していた」ですよね?これは例えば、8時の電車に乗る予定だったのに、駅についたら8時5分だったので、もう電車は出てしまっていた、ということですね。駅に着いた時点において、電車がすでにpartirし終えていたことをあらわさなければなりませんから、これは純粋に時間的な位置関係をあらわすための大過去だと私には思えます。その意味で、ケーキの例と同列には論じられないのでは?8時の電車に乗るはずだったのにとか、それに乗れなかったせいで、遅刻してしまったとか、付随する状況があって、結果的に話者に後悔の念が生じることはもちろんあるわけですが、この場合にそれが大過去によるものとは思えないのです。
最後に差し出さんに。「お叱りは、素より承知の上です」などというご懸念には及びません。最初に書きましたように、拡散しがちな内容をうまく整理してくださり、示唆に富むご助言もあり、久しく真面目に向き合うことのなかった時制をきちんと考え直すきっかけになりました。御礼申しあげます。 それはUn petit platさんにも同様に抱いている感慨で、ご自身は謙遜していらっしゃいますが、フランス語に対する深い洞察力に感銘を受けておりますし、もはや私ごとき者の意見をお聞きになる域は超えていると思えます。ふやけた頭に活を入れていただけて、刺激的でした(^^*)
以上、これで締めくくらせていただきますが、矛盾点、非整合性などお気づきの点があれば、またおっしゃってください。
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Re: 直説法の過去時制について・・・ ( No.15 ) |
- 日時: 2008/05/31 13:16
- 名前: Un putit plat
- 1週間ぶりのこんにちはです。
1週間の間に、こんなに素晴らしくしかも、奥深い解説をして頂いているとは思いました。 本当に感謝しています。 正直、感激すらしています! そして、そうとは知らずに、返信が遅れてしまったことをお詫び致します。
このページはプリントアウトして、よく咀嚼しながら理解していきたいと思います。 謎の?差し出さんも含めて、重ねてお礼申しあげます。 ありがとうございました。
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Re: 直説法の過去時制について・・・ ( No.16 ) |
- 日時: 2008/06/02 14:14
- 名前: Un petit plat
- 立て続けの「こんにちは」です。
まずは、お詫びから(謝ってばかりですが・・・笑) 実は、NO.15の返信は出先からのものでして、多少急いでいた為にハンドルネームすら間違えていた上に、2行目などは支離滅裂な文章となってしまいました。 もちろん、「思いました」は、「思いませんでした」です、、
今回、筆を執りましたのは(PCですが)、『読んだ結果どうだったのか』というお返事をしていないと思いまして、再び寄らせて頂きました。
プリントアウトをして何度も読み返し、時制というデリケートな問題に丁寧にお答えしてもらえたので、何も質問や疑問・・ましてや矛盾点など全くありません。
逆に"はたと"気づかされたことは、『大過去』において、「ケーキの話」にせよ「電車の話」にせよ、「おいしくなかった・・」や「遅刻してしまった・・」という何らかの因果関係の結末が話し手の頭の中に既に用意されていることが、少なくともこの2つの文例の場合、『大過去』を使う必要性なのだと・・・(「いや・・そうじゃなくて・・」と、失望させてしまったらごめんなさい、、) これは、>遅刻してしまったとか、付随する状況があって、結果的に話者に後悔の念が生じることはもちろんあるわけですが・・(てふママさん) >むしろ文脈や状況により、ニュアンスというのが醸し出されることもある・・(差し出さん) のお二人のご意見からそう思いました。
もちろん他にも、勉強になったフレーズや説明はたくさんありましたし、前回のような2スレのような疑問を自己解決できないのも事実です。
そんな訳ですので・・・あともう1つだけ『大過去』について質問をしたいのですが、文字数の関係で項を改めさせて頂きます。
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Re: 直説法の過去時制について・・・ ( No.17 ) |
- 日時: 2008/06/02 15:01
- 名前: Un petit plat
- 今度は、ある意味「ケーキの話」とは逆方向からの質問ですが、またある意味では、今回の一連の質問の締めくくりの確認でもあるのですが・・。
例えば、旅行に行く予定を立てていたとします。 −−「しかし、風邪をひいてしまったので行けなかった、、」
このセリフを仏語で話したい時、どの時制を選択するのが適切ですか?
お手間を取らせないように2択を用意致します。 @ 大過去(風邪をひいた)と複合過去(行けなかった) A 複合過去( 〃 )と複合過去( 〃 )
今回は、「ケーキの話」とは違い「大過去と半過去」という選択は考えていません。(っで、これだったらビックリ!ですが)
また、このセリフのあとに「C'est dommage」などのセリフ(一方、こちらは「半過去」でも可だと考えています)を加えれば、どちらでも結果的に似たようなニュアンスになるのかも知れませんが、できましたらそれは除外してください。
しかし、文法云々以前に >時制の選択には・・(中略)・・きわめて重層的に様々な要素が関係してくるので・・。 の部分が介入する余地があるのかも知れませんので、てふママさんの「わたしなら、この時制で伝える」という参考意見(この表現が失礼にあたったらごめんなさい)でも大いに歓迎です!
>mal choisir son moment -----「ツイてない」 このたった1フレーズから、とても遠いところまで来てしまった(連れて来てしまった)感がありますが、どうか、よろしくおねがいします。
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Re: 直説法の過去時制について・・・ ( No.18 ) |
- 日時: 2008/06/02 22:35
- 名前: てふママ
- Un petit platさん、こんばんは。
「しかし、風邪をひいてしまったので行けなかった、、」をフランス語で話す場合… やっぱり難しいですよね。自分が話すとしても、その時の自分の気持ちと、何をポイントとして伝えたいかによって、(1)と(2)のどちらも可能性があると思います。 そんなわけで、"私なら"という観点でお話するしかないのですが、一番言いそうな可能性があるのは、まず複合過去で「行けなかった」を言い、そのあとで、大過去で「風邪をひいた」を言う、という順ですね。つまり、私の話し方の展開として、「旅行に行く予定を立てていたのだけれど、行けなかったのよ」とまず、帰結を話してしまい、「っていうのはね、風邪をひいちゃったからなの」と、詳述を後回しにするのが自然に思えるからです。理由を先立てる話し方は、日本語でもあまり私はしないような気がします。
もちろん、淡々と、あったことを述べるという気分なら、複合過去で「風邪をひいた」→複合過去で「行けなかった」も十分あり得ると思います(「ので」のような言葉は使わず、etで済ます)。
その場になってみないとわかりませんし、お尋ねの趣旨からは外れるのですが、時制を使い分けるのが面倒なので、à cause du rhumeなどとして、動詞を避けてしまうかも知れませんね(笑)
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Re: 直説法の過去時制について・・・ ( No.19 ) |
- 日時: 2008/06/03 11:17
- 名前: Un petit plat
- こんにちは。
お返事ありがとうございます。
やはり物事の見方(捉え方)次第では、Aの複合過去と複合過去もあり得るんですよね! >à cause de(du) も含めとても参考になりました!
今回の時制の一件、本当にありがとうございました。
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