つまみ食い

フランス語に限らずフランスやフランス文化について、ちょっと面白い話や、
あまり知られていない情報をアトランダムにご紹介します。

古風な名前 2024年01月07日(日)

  「つまみ食い」のコーナーを一新したのは、この記事を書くためだ。長いこと放っておいたので、実用に適さないページになってしまい、日記形式に変更し、今までのログを移し替えた。昔の記事は投稿日時がもはや不明なので、適当である。

さて、私たちフランス語ネイティブでない者には、どうしても言葉の響きがどうなのか、わからないことも多い。最近はまっているフランスのテレビドラマを見ていたら、Auguste(オーギュスト)という名前の男性が登場し、その人のことを「古風な名前だから憶えていた」とメインキャストの人が語る場面があった。確かに最近あまり聞かない名前ではあるが、古風かどうかまでは判断しにくい。現代ドラマはなかなか役に立つ。
 

パングラム 2007年11月17日(土)

  仏和辞典にはふつう載っていない単語だが、パングラム(pangramme)とは、アルファベットのすべての文字を使ったフレーズのことをいう。昔から、英語のパングラムとして、"The quick brown fox jumps over the lazy dog."というフレーズは知っていた。キーボードのアルファベット(古くは欧文タイプライター)がすべてちゃんと機能しているかを確認するのに役立つし、フォントの見た目を確認するのにも、こういう文を知っていると便利だ。最近ふと、フランス語でこれに相当するものがあるのだろうかと思い、出会ったフランス人に聞いてみたところ、思い当たらないと言う。どうやらフランスではあまり一般には知られていないようだが、調べてみるといろいろ見つかった。Wikipediaによると、"Portez ce vieux wisky au juge blond qui fume."というのが最も有名だそうだ。「この古いウィスキーを、タバコをすっている金髪の裁判官に持っていきなさい」といった意味だろうか。
もともとWとKという文字はフランス語にはなかった文字なので、これも含めようとすると、外来語を使わなければならず、何となくフランス語として美しい文章に見えない。もちろん、無理やりすべてのアルファベットを使おうとするのだから、すっきり意味の通った美しい文になるはずもないのだが。
ところで、フランス語で使用されるアクサンの類まですべて含めるとなると、とてもじゃないが覚えられる長さではない。例えば、このようなものだ。"Dès Noël où un zéphyr haï me vêt de glaçons würmiens, je dîne d'exquis rôtis de bœuf au kir a l'ay d'age mur & cætera !"

(2007.11.17)
 

スープは"食べる"もの 2006年02月14日(火)

  最近よく見かけるインスタント・スープのTV CMがある。野菜の具がたくさん入っているので、子役タレントが「飲み物と言うより食べ物ですね」と言うと、姉役(かな?)のタレントが、「こいつ、うまいこと言う」と感心する。そんなストーリーだ。
さて、フランスだったら、このCMは成立しないだろう。なぜなら、フランスではもともと、スープは飲み物ではなく食べ物だという認識だからだ。「スープを飲む」(boire de la soupe)という表現も皆無ではないが、普通は「スープを食べる」(manger de la soupe)と表現する。コンソメスープのような、具がほとんど入っていないものでも同様に「コンソメを食べる」(manger du consommé)となる。

(2006.2.14)
 

“冬”とは? 2005年10月06日(木)

  日本語で「冬」と言ったら、通常太陽暦で、12・1・2月のことと誰もが思う。けれども、天文学上の「冬」は、冬至から春分まで、つまり12月22日頃から3月21日頃までを指すのだそうだ。
さて、フランス語で"hiver"(冬)と言った場合は、明らかにこの天文学上の定義が一般にも浸透している。試しに子供向けの仏仏辞典(日本で言う国語辞典のようなもの)をひいてみても、"la plus froide des 4 saisons, du 22 décembre au 21 mars"(四季のうち最も寒い季節、12月22日から3月21日)と説明がなされている。
日本語の感覚では、同じ年内で秋の次に冬がくると普通思うわけだが、フランスでは12月中の冬は10日間ほどしかないので、だいたい冬と言えば1〜3月という感覚になる。
これは、なにか出来事のあった年を調べているときに勘違いしやすい。例えば「2000年の冬に…」と書かれていた場合、日本語的感覚で読んでしまうと、2000年の12月かと思うが、そうではなく、2000年の1〜3月なのだ。

(2005.10.6)
 

女性喫煙者には 2005年09月21日(水)

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日本では今年7月よりタバコの箱に従来よりはっきりとした警告を表示することが義務付けられたが、フランスでは2003年3月の条例改正により、インパクトのある警告がすでに表示されている。
日本の8種類の警告文はどれも生真面目なものだが、フランスの警告は実に味があると思う。14種類あるうちのひとつが写真のもの。"Fumer provoque un vieillissement de la peau"「喫煙は、肌の老化の原因となります」というものだ。このタバコはメンソールで、メンソール味は女性に好まれることから、女性向けの警告文にしたのかも知れない。病気になるなどと言われるよりも、肌が衰えると言われたほうが、女性にとっては直接的なショックなのではないだろうか(笑)
そういう女性心理まで視野に入れた表示だとしたら、これはまさにフランスのエスプリそのもののように思える。
(2005.9.21)
 

“コンピュータ”から50年 2005年08月02日(火)

  フランス語でコンピュータのことを《ordinateur》(オルディナトゥール)と言う。この言葉が出来てから今年で50年経つ。1955年にIBMフランスが最初のマシンを商品化する際に、フランス語ではどういう名前にすべきかについて、政府が10人の科学者に案を出させたのだ。《ordinateur》を提案したのは、ソルボンヌのラテン文献学教授、ジャック・ペレ。これが採用されて、IBMは《ordinateur IBM 650》という商品名でマシンを売り出し、以後この単語がコンピュータを指すフランス語の普通名詞となっていった。《ordinateur》は「秩序立てるもの」というような意味の造語である。もし他の人の案が採用されていたらと思うと、面白い。他案は以下の通り。

ondelette(オンドレット):「水面の波動」
variation(ヴァリアスィヨン):「変化」
complexité(コンプレクスィテ):「複雑さ」
élémentaire(エレマンテール):「基礎の」
cristal(クリスタル):クリスタルガラス」「水晶」
miroir(ミロワール):「鏡」
désenchevêtrement(デザンシュヴェトルマン):「もつれをほどくこと」
rayonnement(レイヨヌマン):「放射」「輝き」
hélice(エリス):「プロペラ」「螺旋」
icône(イコーヌ):「聖画像」、現代では「アイコン」の意味にも使う

舌をかみそうなdésenchevêtrementにならなくて良かった!

(2005.8.2)
 

ググレ・ゴグレ 2005年06月10日(金)

  検索エンジンGoogleで調べることをネット用語で「ぐぐる」と呼ぶのはよく知られている。ふと、フランス語にもこの類の表現はすでに存在しているのではないかと思いついて調べてみると、案の定あった!
《Googler》という新語の動詞がネット上で通用しているではないか!フランス語の動詞の原形(正確には「不定詞」と呼ぶ)は、決まった数種の語尾の形になるのだが、最も多いのが《-er》という語尾をもつ動詞である。この語尾は新語を作るときも有効で、例えば英語のstopという動詞は、stopperというスペルの動詞としてフランス語に取り入れられた。
ただ、発音に関しては、フランス語では《oo》という綴りは通常「ウ」ではなく「オ」と読むので、「ゴグレ」と発音することは考えられる。けれども、フランスのあるフォーラムでのアンケートによれば、Googleを「ゴーグル」と発音する人は10%で、英語と同様「グーグル」と発音する人は89%とのことだ。そうすると、動詞Googlerも「ググレ」と読む人のほうが多いのかも知れない。さすがにネット上では発音まで確認できないのが残念だ。

(2005.6.10)
 

洋の東西を問わず 2005年05月14日(土)

  フランスの前大統領フランソワ・ミッテランの名前のスペルを確かめたくて検索してみた。自信がなかったのは、「ミッテラン」の「r」が一つなのか二つなのかという点だったのだが、正しいスペルは、François Mitterrandで、「r」は二つである。ところが、「r」が一つになっているスペルミスの何と多いことか!フランスのページ限定でGoogle検索しただけで、21,800件もヒットしてしまった(笑)もちろん、正しいスペルで検索すると182,000件のヒット数であるから、圧倒的に多いのだが、スペルミスの割合はおよ1割にものぼる勘定になる。これは、Mitterrandと書いてもMittérandと書いても、発音が同じになるということが一番の理由だろう。
日本の場合はどうだろうと、「小泉純一郎首相」という正しいキーワードと、「小泉潤一郎首相」という漢字の間違ったキーワードで検索してみたところ、正しいものは160,000件、間違ったほうは160件、「順一郎」だと46件という結果だった。

(2005.5.14)
 

レッド・アイ 2004年11月27日(土)

  右目に結膜下出血、通称レッド・アイと呼ばれる症状を起こしたため、フランス語では何と言うのだろうと調べてみた。《les yeux rouges》(「赤い目」の複数形)かな?と思いきや、これは写真を写したときの所謂「赤目現象」をさす表現だった(笑)
眼科疾患としての言葉は《l'œil rouge》と単数形を使うことがわかった。フランス語では、同じ単語を使っても、単数と複数とでは随分意味が異なることも多い。そして「目」という単語は極めて特殊で、単数形と複数形がまったく違うスペルなのだ。ちなみに、「結膜下出血」という正式なフランス語は、《hémorragie sous-conjonctivale》と言うらしい。

(2004.11.27)
 

ハリー・ポッターふたたび 2004年10月01日(金)

  フランス語を知っていると、「ハリー・ポッター」シリーズの読書の楽しみが倍加する。著者J.K.ローリングがフランス語の教師であったこと、フランス在住経験があることは知られているが、フランス語の要素が作品の随所にちりばめられているのだ。とりわけそれは固有名詞のつけ方に顕著で、例えば全巻通してハリーと深くかかわってくる魔法使い「ヴォルデモート」を取り上げてみよう。原作でのつづりは"Voldemort"で、この名前を見た途端、フランス語を知っている者は"vol de mort"(ヴォル ド モール)という言葉がイメージできる。訳せば「死の飛翔」、いかにも最も恐ろしい闇の魔法使いというキャラクターが表現されている命名だ。英語圏の人々でフランス語を知らない人は、この名前に接してどう感じるのだろう。

(投稿日時不明)
 


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