笑えるフランス語

街やWebで見かけた困ったフランス語をご紹介
笑えることが少なくなることを願って…

経緯を聞いてみたい 2011年02月02日(水)

  【Belle Lecheveu ヴェール・レッシュブ】

これは、お知らせいただいた情報。情報提供者さんが行っていらっしゃる美容室の店名だそう。ネットで調べても、多店舗展開のお店だということがすぐわかる。

この店名については、ひどいフランス語だという指摘が、日本のブログでも、フランス人観光客のブログでもすでに取り上げられていて、今更という気もするが、皆さん、あまりのひどさに解説をなさっていないので、取りあえず解説をしたいと思う。

まあ、店名はフランス語由来ですとは、どこにも書かれていないので、言い逃れはできるだろうが、フランス語が元であることは明らかだ。おそらく「美しい髪」とか、「髪を美しく」などというニュアンスの店名にしたかったのだろう。

どこから手をつけてよいやら、迷うが、まず発音。Bの文字に「ヴ」というカタカナを使う意味がわからない。「ヴ」を使うのはVだ。ただ、同じ系列の店なのかカタカナ表記が「ベル・レッシュブ」という店名も存在する。「ベル」ならBelleの発音としては正しい。

次にLecheveuのほう。これは本来Le cheveuと2単語になるべきもので、「髪」を意味するcheveuに、定冠詞のleがついたもの。2単語を1単語であるかのようにくっつけて書いてしまうのは、ロゴなどではよくあることなので、まあよいとしよう。それでも読み方で「レッシュブ」と、小さな「ッ」を入れるのは不思議だし、そもそもLeの読み方は「レ」ではなく「ル」。まあ、平均的な表記にすれば、「ベル ル シュヴー」となる。

さて、文法的にどうかということになるが、これが滅茶苦茶で意味不明なのだ。もし「美しい」を「髪」を形容する形容詞として使うつもりなら、Belleは大間違い。「髪」cheveuは男性名詞なので、beau(ボー)というスペルを使わなくてはならない(belleはbeauの女性形)。しかも特殊な単語を除いて「形容詞+冠詞+名詞」という語順は変なので、冠詞を頭に置かなくてはならない。つまり「美しい髪」なら、le beau cheveuとなるのが正しい。

belleは、形容詞の女性形のほかに、名詞としての用法もある。「美女」という意味だ。でも、これを「髪」と関連づけるのなら、「美女の髪」くらいしか思い浮かばないが、その場合はles cheveux de la belleとなる(「髪」は複数が一般的なので複数形にした)。

いったい誰がどのような意味を想定して、どうやってこの店名をつけたのか、本当に知りたいものだ。
 


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